数種の職種によって印刷物が出来上がった

DTPとは語源から言えば印刷物を机上で作ることですが、現在は、編集工程までをコンピューターで行い、出来上がったファイルを印刷所へ渡して印刷してもらう形が、最も普及しています。

ということで、まずは印刷の流れを簡単にお話ししておきましょう。DTPが普及する前の印刷物製作は、大まかにいうと次のような工程が必要でした。

  1. 企画立て
  2. 編集・デザイン
    • 文章の紙面割り付け(レイアウト)
    • 写真の配置
    • グラフや図形の制作と配置
  3. 版下製作
    • 版下とは、文字が配置され、写真・図形等の配置される場所が確保されており、印刷工程に回せる品質になっているもの(印画紙状態)。
  4. 製版
    • 版下をもとに、写真などを取り込んで、印刷機にかけられる状態までにする工程。4色印刷(フルカラー印刷)では、4枚のフィルムを作る。
  5. 印刷
    • オフセット印刷=製版で作られたフィルムの内容をPS版(アルミ製)に焼き付け、それを印刷機にかけて印刷する。樹脂板を使うことも。
    • 活版印刷=金属でできた文字(一文字ずつがハンコのようになっている)を並べて活版印刷機にかける。
    • その他=ほかにもグラビア印刷などさまざまな手法がある。
  6. 製本
    • 印刷されたものをページ構成に合わせてまとめ、本の形にする。

これらの工程すべてを一つの印刷所が持つ場合もありましたが、工程別に中小の別会社で実施される例も多かったようです。

「編集・デザイン」は、プロダクションやデザイン事務所で行われました。現在でもこれは同じです。

「版下製作」は、版下屋さんと呼ばれる専門の会社で行われることが少なくありませんでした。DTPが今ほど普及する前は、写植と呼ばれる方法で版下を作っており、専用機を持つ版下屋さんに、デザイナーや編集者はお世話になっていました。版下は印画紙であるため、あとからの修正が難しいので、修正部分だけを打ち直し、先に出した版下に接着剤で貼って直すという方法がよくとられました。

「製版」作業も、印刷所内で行う場合と、専門の会社で行われる場合との両方がありました。ここでは、写真を取り込むだけでなく、モノクロ印刷ではアミ(グレーになっている部分)を乗せたり、カラー印刷では色を乗せたりする作業も行われました。編集者やデザイナーがトリミング(写真などの一部を取り出して使うこと)指示をした写真や色指定などが、ここでようやく形になりました。

「印刷」工程では、製版工程で作られたフィルムをもとに、紙による大量の複製が行われます(オフセット印刷の場合) 。インキ濃度や印圧など、職人技が必要になる工程で、今でもこれは変わりません(すべてをコンピューターによるものもあります)。

「製本」工程は、さまざまな製本方法をフォローします。厚紙の表紙で、中身を糸でとじる「糸かがり」の「上製本」をはじめ、中央をホチキスで留めるだけの「中とじ」、糸や金具などを使わず接着剤でまとめる「無線とじ」など、依頼に合わせた製本が行われます。製本は現在でも、多くが以前のように実施されています。