戻る もう君と離れて暮らしていけない…

いなま〜



 1992年(平成4年)の春だった。仕事仲間のT氏が、Macintosh LCというコンピュータを私の事務所(当時3畳・笑)へ持ってきた。

 氏いわく「これを使って、パソコン通信の体験記事を書いてくれない?」

 1990年1月から自分で仕事を始めた私は、当時NECのワードプロセッサ《文豪》を使っていた。仕事の内容は、取材記事作成のほか、会社案内や製品カタログのコピー(文章)作成だったため、ワープロ一台あれば事足りていたのである。

 で、T氏の依頼はこうだった。

「○○労働組合の福利厚生制度を一冊にまとめた本を作るんだけど、どうせなら読む人の趣味が広がるようなものをということで、いろんな体験記事を載せることにしたんだ」

 それは、ルアー釣り、プラモデル作り、ジムカーナ、オートキャンプ、陶芸、絵画、盆栽、社交ダンス、スキー、4級小型船舶と、とにかくいろんな趣味に突撃体験して、読者に楽しさを知らせようというものだった。そして私に回ってきたのは「パソコン通信入門」と「バンド活動入門」だ。

 バンドの方は知り合いのライブホールに頼み込んで、2つほどインディーズ系のバンド取材をさせてもらい、自分の経験を交えてなんとか書き上げたが、パソコン通信の方は、とにかく私自身が始めてみなくては話にならない。まさに入門記事というわけだ。

 《文豪》を手に入れたとき、その機種にはオプションでモデムを取り付けることができ、パソコン通信の世界を楽しめることを知った。当時のスピードは、なんと1200bps(現ISDNは64000bps)という超低スピードだったわけだが、それでも私はめちゃくちゃ興味を持っていた。ところがオプションのモデムを取り付ける経済的余裕がなく(笑)、やりたいけどやれないという、まさに「おあずけ」状態だったわけである。

 そんなときにT氏がLCを持ってきた。

 手持ちの資料によれば、LCの発売年は1990年。1992年当時、T氏はIIfxやIIci、そしてIIsiなどを使用してDTPをやっていた。LCは買ったばかりだったかもしれない。あるいはLC IIが1992年に出ているので、もしかしたらそのLCは「お古」だったかもしれない。そうか…「お古だった」と思った方が正解かもしれない。私の所へわざわざ持ってくるぐらいだから…。

 とにかくLCがうちの狭い事務所にやってきたのである。当時のMacにはモデム内蔵なんてあり得ないので、オムロンの2400bpsモデムも貸してくれた。

 それから2カ月間ほど、私はLC漬けになった。

 パソコンといえばMSXをちょっとさわったことがあるだけの私で、MS-DOSも全く知らなかったから、Macをいじれるようになるかどうか心配だった。しかし触るうちに、そんな心配は吹き飛んでしまった。それまで知らなかったGUI(Graphical User Interface)は、右脳人間の私(要するに感覚だけで生きている・笑)と相性が良かったらしく、するするとその世界へ入り込んでしまったのだ。

 Macに慣れてきたころ、Nifty-Serve(現@nifty)のIDを取った。EG Talk(エルゴソフト製のMac用通信ソフト)を買った。そしてパソコン通信の世界へ…。

 NiftyのMac関連会議室はなかなか居心地が良く、パソコン通信は私の生活の一部になっていった。そしてLC到着から2カ月ほどがたった。

 依頼された原稿も上がり、とうとうLCを返す日が来た。

 もうお分かりだろう(^_^;。私はLCを返したくなくなっていた。それは自分で買ったEG Talkが無駄になるからではなかった。この2カ月の間で、私はMacにずっぽりハマってしまったわけだ。

 そして秋。9月の初旬には、3畳事務所にIIci、縦型15インチのポートレートモニタが入っていた。バカ高いMacだったが、結局私は、Macから離れることができず、自分で購入してしまったのである。

 というわけで「私の初めてのMac」はLCだった。そして自分で買った初めてのMacはIIciなのである。

 IIciについては、辛い(笑)思い出がある。

 当時のMacのハードディスクには、購入時にシステムが入っていなかった。フロッピーでOS(当時は日本用OSを「漢字Talk」と言っていた)が供給されていたのだ。そして販売店の中には、OSのインストールサービスをしているところもあった。私が買った店でもそれをやっていて、IIci購入時にはOS及び一緒に買ったソフトがすべてインストールされていた。

 ところが、である。IIci使用から2日目、Finder上に見えていたファイルやフォルダがどんどん消えていったのである。原因は全く不明。OSのことなどまるで知らない私はパニックに陥った。そして販売店へ電話。結局のところ、ハードディスクを初期化してOSインストールをし直せと言われた。大体の方法を電話で聞き、メモを取り、それに従ってハードディスク初期化。心臓バクバクものだった。自分のコンピュータが2日目で壊れるなんて…。

 それでもなんとか復旧し、すぐにNifty-Serveへアクセス。それから毎日、Macのトラブル相談や雑談の会議室へ顔を出し、結局、今の私になってしまったというわけだ(笑)。


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